日本語訳では『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』というタイトルになっています。


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彼女の前作『The Will Power Instinct』に続いてkindleで原著を読んでます。分かりやすい英語なので、さほどの英語力がなくてもスラスラ読めると思います。

いくつもの興味深い実験調査や社会活動の実例をあげ、
 ストレスや苦難、苦しみが人間を成長させてくれることを実証していきます。前半のマインドセットの効果も興味深いですが、苦難が人にいわゆるレジリエンスや思慮深さ、強さをもたらしてくれるとの議論に私は最も関心を持ちました。こうした議論はヴィクトール・フランクルが言うところの「ホモパティエンス」、つまり苦悩に際し、どのような態度をもってそれを受け入れるかによって、人間は大いに自分を超越させていくことができる、という議論と共通しています。

バッファロー大学の心理学者が2010年に行った調査では、病気、友人や愛する人の死、経済的困窮、離婚、家庭不和、隣人トラブル、性的なものを含む暴力の被害、家事や洪水などの災害のサバイバーなどのストレスフルな出来事を経験した人を4年間追跡調査し、その結果、何も経験しなかった人に比べて彼らはうつ病のリスクが低く、身体的にも健康で、人生にも満足している人が多かったという、予想とは逆の結果が報告されています。

決して不幸な出来事自体は歓迎するべきものではないですが、苦悩すること、衝撃的ともいえる悲しくつらい経験は、人にresilienceや成長をもたらす契機でもあるということです。どんな苦悩の中でも、そこで自分がどういう態度でその苦しみに臨むのか、その点についての自由は常に人間に実は残されていることが強調されています。この心理学者はこう述べています。

Given that it's happened, does it mean your life is ruined? People are not doomed to be damanged by adversity.

困難によって人間は必ずしも傷つくとはいえないのだ、と。

フランクルが強制収容所で経験したことには及ばないでしょうが、身近にも大変につらい思いをしたことがある人がいます。こうした人々は、確かに私の経験上、度量が広く小さなことにイライラせず寛容な人が多いように思います。苦しみは決して厭うべきものではなく、どういう態度でそれに臨むかのか、フランクルに沿って言えば、自分が人生から与えられた質問に答えを出す良い機会なのかもしれません。

しかしできればあのような苦しみは二度と味わいたくない、私はいつもつらかった時のことを思い出す度にこう思っているので、いつまでもたっても自分を超越することなど叶わない人生です。